カテゴリー 私の大工の履歴書
木の家・自然な家で、あなたの暮らしを楽しみませんか?
東京・多摩エリアの「つくり家工務店」です。
最初につくったピクニックテーブル
偉大なる?最初の師との出会い
大都市バンクーバーからフェリーに揺られること1時間半。
バンクーバーアイランドの玄関口のひとつ、ナナイモに降ります。
さらに、バスに乗り換え、約束の地パークスビルまで進みます。
今回、面倒を見てくれるマイルスから教わった住所になんとかたどり着いたのですが、そこにあるのはキャンプ場のような広い敷地です。
周りには人家もなく、森の中のワークサイトといった感じ。
雰囲気は最高ですが、マイルスはまるでくる気配がありませんでした。
日時は伝えておいたので、わかってはいると思うのですが。
現在なら誰もが携帯電話を持っているので有り得ないのですが、この時は手紙でしかコミュニケーションの手段を持ち合わせていませんでした。
待つしかないのです。
夜になっても変わらず……。
仕方なく、今夜はここにテントを張ってお休みです(苦笑)。
今ならこんなふうにはしないだろうなぁ~
むしろ、いい時代だったのかもしれません。
翌朝、
車がテントに横づけする音に気づいて目覚めます。
半分寝てるような状態でテントを出ると、
「やぁ〜、おはよう。テント張って寝たんだぁ!?」
と悪びれず、マイルス・ポーターが握手の右手を出してきました。思ったより小柄な男です。。
この後も散々振り回されるのですが、ログハウスの業界では案外名の知れた人物(当時)。
そして、結果的に私を建築業界に引きずりこんだ人と言ってもいいでしょう。
「今、スクールも仕事もないんだよね〜、だから何も与えられるものはない。ただ、ウチに住んでいいし、この作業場にあるもので好きに作って勉強していいよ」。
器がでかいのか、突き放されているのか、もはやよくわからなくなっていましたが、なにはともあれ、半年ほど、彼の家の離れに住むことになりました。
チェーンソーだけは自分で買い(当時、日本で買ったら3倍くらいしてた)、
ガソリン、オイルは使い放題(当時はガソリンがかなり安かったとは言え)。
マイルスはたまにきて、チェーンソーワークをさらっとやって見せて終わり(笑)。
あとはどこかへ遊びに行って消えてしまうのです。
だから、その貴重な実技指導をまばたきもしないくらいにじーっと観察してました。
その時は、「もっと面倒みてくれないかなぁ」などと思っていましたが、今思えば、こんな有り難いことはなかったんですよね。
材料や道具は使い放題。技術も見せてくれる。
必要以上に教えてくれないのが、ある意味良かったのかもしれません。
数少ないチャンスをしっかり観察すること、自分で考えて工夫したり、決めること。
今の自分にしっかりと役立っていると感じました。
これぞカナダという暮らし
マイルスの家は、街から離れた、森の中に佇む大豪邸(もちろんログハウスです)。
私の居住地は、そこから50mぐらい離れた作業小屋の2階。
この辺りは、北米産材木の大産地。
天に向かって真っすぐ伸びたダグラスファー(米松)の巨木が、所狭しと乱立する大きな森の中です。
ピューマや鹿、クマに普通に遭遇するような、人をあまり感じられない場所。
いちばん驚いたのは夜。
人が訪ねてきたのですが、真っ暗すぎて、姿形を捉えることができないのです。
シルエットですら認識できたのが、お互いが50センチまで近づいた時。
嘘みたいな話なんですが、本当なんです。
人の気配、人工物、人工の音が感じられなくなると、人間は急に不安を感じるようになります。
そして、自然への畏怖、畏敬の念を覚えるようになります。
自分の小ささも痛いほど感じるのです。
日本ではまず体感できないことだと思います。
この体験だけでもカナダに来て良かったなぁと思えたし、自然と共にいることが、人の脳、カラダを研ぎ澄ませてくれるんだと実感しました。
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